🇵🇭 マフィア vs. 財閥:フィリピンの政治経済を支配する「ファミリー」の論理

 


🇵🇭 マフィア vs. 財閥:フィリピンの政治経済を支配する「ファミリー」の論理

2025年11月24日 月曜日 その2

フィリピンで今、世間を騒がせている汚職事件。その背景を深掘りすると、まるで映画**『ゴッドファーザー』**の世界、つまり「**ファミリー(一族)**としていかに影響力を拡大するか」という論理が見えてきます。これは、日本の戦後の政治経済史、例えば田中角栄氏の成り上がりと地方開発の構図とも重なる部分があり、フィリピンの歴史と深く関わりがあるのではないでしょうか。


👑 フィリピン経済を牛耳る「財閥(コンツェルン)」

日本は戦後、GHQ(連合国軍総司令部)による財閥解体を経て、政府と企業の特定の癒着構造を断ち切りました。しかし、フィリピンでは、10大財閥が今も経済を動かしています。これらは昔ながらのスペイン系や中華系のルーツを持つ一族が中心です。

彼らの特徴は、すべての主要産業に携わる巨大なコングロマリットであることです。

  • サンミゲル(San Miguel): ビールで有名ですが、巨大な食品産業を核に、不動産開発、空港建設、高速道路の建設・管理業務まで手掛けています。

  • アヤラ財閥(Ayala Corporation): スペイン系財閥で、金融を中心に、不動産開発、都市開発、通信、インフラなど多岐にわたります。アヤラ系が開発するマンションは、その信頼性の高さから、他のデベロッパーのものよりも高額で取引され、価格も下落しにくい傾向があります。

🤝 地方を支配する「成り上がり」政治家と汚職

今回逮捕状が出たコー一族は、この10大財閥のすぐ下に位置する、ビコール地域で成り上がった勢力の典型です。

彼らは、地元の土建業(建設業)上がりとして、地方のインフラ開発を請け負うために政界に進出し、公共事業の予算を地元に落とすという、**「地元密着型のビジネスモデル」**を確立しました。これは、かつて新潟県で田中角栄氏の一族が行った手法と酷似しています。

高度経済成長期においては、こうした手法がインフラ整備を急速に進めるための「必要悪」であった側面も否定できません。

🗳️ 汚職の連鎖と国民の責任

しかし、今回の事件では、請け負った仕事もせずに、行政と結託して国家予算を山分けしていた疑いがあります。そして、山分けされた資金が、任期3年の地方選挙を戦い続ける一族の政治家たちの選挙資金に回っているのです。

フィリピンでは大統領・副大統領選挙以外は3年ごとに選挙が行われるため、多額の資金が必要です。選挙運動では、有権者に対する**現金給付(買収)**がしばしば行われます。

この構図を前にすると、「汚職はけしからん」と怒りを表明しながらも、その「汚いお金」で票を売っている有権者がいるという現実も見過ごせません。政治家と国民の双方が、この汚職の連鎖の**「どっちもどっち」**の側に立っているという、残念な実態が浮き彫りになります。


🇯🇵🇵🇭 日本とフィリピンのODA:透明性と未来の責任

日本政府が太平洋戦争後の補償の一環としてフィリピンに対して行っている**政府開発援助(ODA)**は、両国関係の重要な柱です。

多くの人がODAを「日本の国家予算からの無償給付」と捉えがちですが、実際には、その大部分は超低金利で日本から貸し出される円借款の形をとっています。例えば、現在マニラ首都圏で進められている地下鉄工事も、**JICA(国際協力機構)**を通じて日本から低金利で融資されています。

💰 中国の一帯一路と日本のODAの違い

中国の「一帯一路」政策が、インフラ整備に必要な資金を高金利で貸し付け、債務国が返済不能に陥った際にその施設を中国が接収する、いわゆる「債務の罠」外交として批判されているのに対し、日本のODAは、極めて慎重かつ透明性を重視して運用されています。

フィリピンの公共工事は、このように日本からのODAによって、安定的にそして友好的に支えられている部分があるのは事実です。

⚠️ ODAと汚職:未来への責任

しかし、このODAによる融資には、当然ながら透明性が必要です。低金利とはいえ、外国からの借金であることに変わりはなく、最終的にフィリピン国民が孫子の代まで背負う負債となります。

先日報じられたような大規模な洪水対策事業をめぐる汚職が、もし日本からのODAを利用したプロジェクトで行われたとすれば、それは国民に対する裏切り行為に他なりません。

私たち市民は、政治家が私腹を肥やすために公的資金、特に将来世代に負担をかける借金に手を染めることを断じて許してはなりません。そして、もしこのような不正が発覚した場合は、フィリピン政府だけでなく、ODAの提供者である日本政府も即時に資金援助の打ち切りを含めた厳格な措置を取るべきです。

ODAは両国の友好と発展のためのものであり、一部政治家の汚職の温床であってはならないのです。


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